録画していつか見よう見ようと思いつつそのままになっていたNHKスペシャル「長すぎた入院」をやっと見た。
東日本大震災の福島原発事故で立ち入り禁止となった地域に、精神科病院が5軒あった。入院患者も当然避難せねばならず、引き続きの入院が必要か再検討されることになった。このドキュメンタリーは、そのうちの一人で、40年間にわたって入院生活を送っていた60代男性のその後を追っている。
彼は統合失調症の診断を受け、人生のほとんどを精神科病棟で過ごしてきたわけだが、福島原発事故をきっかけに初めて他院の医師の診察を受け、入院の必要がないと判断された。そればかりか、医師は「なぜ、この人に長期入院が必要だったのかわからない」と首をひねっていた。彼ばかりではない。入院していた患者の、なんと9割が入院の必要はないと診断されたのだ。
ドキュメンタリーでは、不要な長期入院に至った理由は、医療だけではなく、家族や社会にも課題があることが静かに訴えられていた。
世界の精神科病床のうち、約2割が日本を占めているという。
入院の必要のない人が精神科病棟で長期に入院している。それは、だれかだけの責任ではなく、「なんとなく考えるのがやっかいなこと」は見ないようにすませている社会の無関心のせいでもあるだろう。それでも、精神科医療も社会の目も、少しずつ変化してきているのを感じる。
最近、官公庁で雇用されている障碍者数が水増しされていたのが明るみになった。今に始まった問題ではなく、40年以上前から続いていた慣習であったことも報道されていた。水増しは問題だが、隠しきれる社会ではなくなっているのも事実ではないか。
人々の目につかないところで、何が行われているのか。関心を向け続けることで、少しでもフェアに社会になるようにと願う。
特定非営利活動法人 バムスぴあ
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